「拝読いたしました」は二重敬語ですか?

2 ビュー

「拝読いたしました」は、謙譲語である「拝読」と丁寧語「いたしました」が組み合わさっているため、二重敬語にはあたりません。ビジネスシーンでも問題なく使用できる、適切な表現です。

コメント 0 好き

「拝読いたしました」は二重敬語か否か、一見すると単純な問題のように思えますが、日本語の奥深さ、そして言葉遣いの微妙なニュアンスを理解する上で重要な論点です。上記のように「謙譲語と丁寧語の組み合わせだから二重敬語ではない」と断言するのも、必ずしも正確ではありません。なぜなら、二重敬語の定義、そして「拝読いたしました」の使用状況によっては、二重敬語と捉えられる可能性も孕んでいるからです。

まず、二重敬語とは何かを改めて確認しましょう。一般的には、謙譲語と尊敬語、または謙譲語と丁寧語を同時に用いることで、過剰な謙遜となり、不自然で不適切な表現になってしまうものを指します。 例えば、「お伺いいたしました」は、謙譲語の「伺う」と丁寧語の「いたしました」が重なり、二重敬語とされるケースがあります。しかし、「お伺いしました」であれば、丁寧語は「しました」のみで済み、自然な表現となります。

では、「拝読いたしました」はどうか。確かに「拝読」は謙譲語で、手紙や文書を相手に対して敬意を払いながら読んだことを表します。「いたしました」は、丁寧な完了の助動詞です。この組み合わせが、必ずしも二重敬語とは言えない理由として、以下の点が挙げられます。

一つ目は、「拝読」の対象が文書である点です。文書は、それ自体が話し手(書き手)と聞き手(読み手)の間を取り持つ媒体です。そのため、「拝読」は、文書に対する謙遜というよりは、文書の内容を通して相手への敬意を表す行為と解釈できます。相手自身を直接的に敬う尊敬語とはニュアンスが異なるため、二重敬語と断定するのは早計です。

二つ目は、「いたしました」の丁寧さの度合いと「拝読」の謙譲の度合いのバランスです。「拝読」は比較的強い謙譲表現ですが、「いたしました」は日常会話でも使われるほど、丁寧さとしてはそこまで強いものではありません。このバランスが、不自然さを生まない程度に保たれていると考えられます。

しかし、文脈によっては「拝読いたしました」が不自然に聞こえる場合も否定できません。例えば、非常に親しい間柄で、堅苦しい表現を避けたい場面では、より自然な「読みました」「読ませていただきました」などが適切でしょう。また、非常に重要な文書であったり、相手との関係性が上下関係が明確なビジネスシーンにおいても、より控えめな表現の方が適切な場合があります。「拝見いたしました」や「熟読いたしました」など、状況に応じて使い分けることが重要です。

結論として、「拝読いたしました」は必ずしも二重敬語とは言えないものの、文脈によっては不自然に聞こえる可能性がある、微妙な表現です。完璧に安全な表現とは言えず、状況に応じてより適切な表現を選ぶことが重要です。 過剰な謙遜は、かえって相手に不快感を与える可能性もあることを忘れず、常に相手に配慮した言葉選びを心がけるべきです。 日本語の奥深さを改めて認識し、言葉の選び方に細心の注意を払うことで、より円滑なコミュニケーションを築けるでしょう。