小児科は儲かりますか？

小児科は儲かるのか？この問いに対する答えは、単純な「はい」か「いいえ」では片付けられません。収入は勤務医と開業医で大きく異なり、さらに、勤務先の規模や立地、専門性、そして医師自身の努力や経営手腕によっても大きく左右されるからです。令和3年のデータに基づいた平均年収はあくまでも指標であり、個々の医師の現実とは乖離している可能性も高いことを理解しておく必要があります。

まず、提示された令和3年のデータ、開業医の平均年収約2192万円、勤務医の平均年収約1220万円を見てみましょう。この数値の差、約1000万円は、開業医が抱えるリスクと努力の対価と言えるでしょう。開業医は、診療所の経営、スタッフの雇用、設備投資、保険請求など、医療行為以外の業務に多くの時間を費やす必要があります。成功すれば莫大な利益を得られる一方、経営不振に陥れば多額の負債を抱えるリスクも背負います。集患戦略、マーケティング、経理管理など、医師としてのスキルに加え、経営者としての能力も求められるのです。立地条件も大きく影響します。都市部の大規模病院と、地方の小さな診療所では、患者数や診療報酬に大きな違いが生じるのは想像に難くありません。

対照的に、勤務医は安定した収入を得ることができます。給与は勤務先によって異なりますが、一般的に開業医よりも低いものの、経営リスクを負う必要がなく、残業代や休暇制度なども比較的整備されているケースが多いでしょう。勤務医として経験を積み、専門性を高めることで、将来的に高収入を得られる可能性もあります。例えば、特定の専門分野（小児アレルギー、小児循環器など）に特化した医師や、大学病院などで高度な医療技術を持つ医師は、高い年収を得ることが期待できます。さらに、勤務医であっても、非常勤医師として複数の医療機関で勤務することで、収入を増やすことも可能です。

しかし、平均年収だけで「小児科は儲かる」と結論づけるのは早計です。小児科は、他の診療科と比べて、診療報酬が低い傾向にあります。また、予防接種や健診など、比較的低価格の診療が多いことも収入に影響を与えます。加えて、小児患者は、訴訟リスクが比較的高いと言われています。親御さんの不安や期待に応えることが求められ、コミュニケーション能力や精神的な負担も大きいため、医師としてのスキルだけでなく、人間的な魅力や対応力も重要になります。

結論として、小児科の収益性は、医師のキャリアパス、勤務形態、診療スタイル、そして立地条件など、様々な要因が複雑に絡み合って決定されます。平均年収は一つの指標に過ぎず、個々の状況を考慮せずに判断することはできません。 小児科医を目指すのであれば、単なる金銭的な見返りだけでなく、子供たちの健康を守るという使命感と、多様な課題に立ち向かう覚悟が必要となるでしょう。 高収入を期待するならば、開業医として成功するための戦略を綿密に練り、経営手腕を磨く必要があり、安定を求めるならば、勤務医として専門性を高め、キャリアアップを目指すことが重要です。 「儲かるか」という問いではなく、「やりがいと将来性を見据え、自分にとって最適なキャリアを築けるか」という視点で、将来を考えるべきなのです。