つけあげとも呼ばれる天ぷらは？

鹿児島のソウルフード「つけあげ」：その奥深き世界

鹿児島県民にとって、ソウルフードと言えば「つけあげ」。県外では「さつま揚げ」と呼ばれることが多いこの料理は、魚のすり身に豆腐や地酒などを加え、油で揚げたもの。一見シンプルながらも、その歴史、材料、製法、食べ方、そして各家庭の味付けに至るまで、奥深い世界が広がっている。

つけあげの起源は諸説あるが、薩摩藩時代に琉球から伝わったという説が有力だ。当時の琉球では、魚のすり身を揚げた「チキアギー」と呼ばれる料理が存在しており、それが薩摩藩に伝わり、独自の進化を遂げたと考えられている。薩摩藩では、保存食としての役割も担い、武士の戦場食としても重宝されたという歴史もある。

つけあげの最大の特徴は、その材料と製法にある。ベースとなる魚のすり身には、アジ、サバ、トビウオなどが一般的。新鮮な地元産の魚介を使用することで、独特の風味と食感が生まれる。高級品には、エソやハモなどの白身魚が使われることもあり、より上品な味わいを楽しめる。

豆腐を加えることで、ふわふわとした柔らかい食感を実現。また、地酒を加えることで、魚の臭みを抑え、風味を豊かにする効果がある。鹿児島独特の甘めの味付けは、砂糖を加えることで生まれる。この甘さが、魚の旨味と絶妙に調和し、ご飯のおかずとしてはもちろん、お酒のつまみとしても相性抜群だ。

つけあげの製法にも、各家庭やメーカーによってこだわりがある。すり身の配合、豆腐の水切り具合、揚げ油の種類や温度、揚げ時間など、微妙な違いが味に大きな影響を与える。まさに、職人技が光る逸品と言えるだろう。

つけあげの楽しみ方は多岐にわたる。そのまま食べるのはもちろん、軽く炙ったり、大根おろしと醤油で食べたり、煮物や味噌汁の具材として使ったりと、様々なアレンジが可能だ。家庭では、それぞれ独自の食べ方があり、母の味として受け継がれていることも多い。

近年では、つけあげ専門店も増えており、様々な種類のつけあげが販売されている。定番の魚のすり身の他に、チーズや野菜を練り込んだもの、カレー味や黒糖味など、バラエティ豊かなラインナップが魅力だ。お土産としても人気が高く、鹿児島を訪れた際にはぜひ味わってほしい。

また、鹿児島のスーパーマーケットでは、実に多くの種類のつけあげが並んでおり、地元民の生活に深く根付いていることがわかる。それぞれのメーカーが独自の製法や味付けで競い合っており、自分好みのつけあげを探すのも楽しみの一つだ。

つけあげは、単なる揚げ物ではなく、鹿児島の歴史と文化、そして人々の生活が凝縮されたソウルフードと言える。その奥深き世界を堪能することで、鹿児島の魅力をより深く理解することができるだろう。一口食べれば、きっとその魅力に虜になるはずだ。