アジアで最も古いカルスト地帯として知られるベトナムの「フォンニャ=ケバン国立公園」は、原生林に覆われた秘境。イギリス人の洞窟探検家ハワード・リムバート氏がこの地を訪れたのは1990年のこと。以降、ベトナム人の協力を得ながら洞窟探検を継続した結果、新ルートや新洞窟を次々と発見してきました。数えられないほど多い大小さまざまな洞窟の存在、多様な動植物が生息していることから、2003年にユネスコの世界自然遺産に登録されています。
観光客向けに整備され一般公開されている洞窟では、ドンホイを訪れる多くの観光客がリムバート氏の探検を追体験しています。そんなフォンニャ=ケバン国立公園の魅力を明らかにしていきましょう。
フォンニャ=ケバン国立公園は、4億年以上前に形成されたアジア最古とされるカルスト地帯。ベトナム中部の港町ドンホイの西約30kmに位置し、南西側の一部はラオスに隣接しています。国立公園内にある洞窟の数は、大小あわせて300とも1000ともいわれる未知の聖域。敷地内の約94%は原生林に覆われており、絶滅危惧種を含む多種多様な野生生物や植物が生息している、まさにベトナムの天然動植物園ともいえる場所です。
一般に公開されている有名な洞窟は「フォンニャ洞窟」と「ティエンソン洞窟」の2か所でしたが、現在も少しずつ開発が進行中!この記事では、観光客でも入れるおすすめの洞窟と、探検家しか立ち入ることができないダイナミックな洞窟をご紹介します。
フォンニャ=ケバン国立公園の起点となる街は、ベトナム中部のドンホイです。日本からのアクセスは、ハノイかホーチミンを経由して、ドンホイ空港へ向かいます。ドンホイへのフライト時間は、ハノイから約1時間30分、ホーチミンから約1時間45分ほど。
ドンホイからフォンニャ=ケバン国立公園へは、車で1時間もかかりません。
この世界遺産の代表的観光スポットともいえる「フォンニャ洞窟」は、フォンニャ=ケバン国立公園内でも特に人気がある洞窟。その理由は、洞窟へのアプローチがボートだということ!
自然豊かな景色を見ながら洞窟入り口までクルーズを楽しんでいると、大きく口を開けて待ち構えている洞窟入り口が見えてきます。
川が洞窟の中まで続いているので、ボートに乗ったまま洞窟内へ進入!洞窟内を1kmあまりボートで進めるのが特徴で、終盤は歩いて観察します。雨季である10月~12月は水位が増して入れないこともあるため、事前に確認しておくと良いでしょう。
そのフォンニャ洞窟から500段以上階段を上った上に入口がある「ティエンソン洞窟」は、洞窟内に川がないため「ドライケイブ」とも呼ばれています。ボートでアプローチできるフォンニャ洞窟と比べると階段を上らなければならないので、比較的観光客が少なめ。しかし内部は壮大で見ごたえがあり、周遊しながら見事な鍾乳石を堪能できます。時間と体力に余裕があれば、ぜひ足を延ばしてみてくださいね。
「ティエン・ドゥオン洞窟」は、まるで天国のような美しさ!と形容され「天国の洞窟」と呼ばれています。世界遺産登録を受けて整備が進み、観光客にも一般公開されるようになり、近年では注目度ナンバーワン!
小さな入口からは想像できない全長約31km、高さ約150mに及ぶ大洞窟の壮大さにまず驚きます。その半面、美しい石筍や繊細で多彩な鍾乳石が見られる別世界で、まさに天国の洞窟!内部は遊歩道が整備されていますがとても広く、駐車場と鍾乳洞入口は電動カートを利用しても歩く必要があるので、履きなれた靴を履いていくようにしましょう。
フォンニャ=ケバン国立公園には天国の洞窟がある一方、「暗黒の洞窟」と呼ばれる「トイ洞窟」もあります。暗黒の洞窟へ入るためには、ジップラインで湖を渡ったあと、泳いで洞窟へ入らなければなりません。名前のとおり暗黒の洞窟ですから、ヘッドライトも必須です。真っ暗な中、狭い泥の道を進むと、経験したことのない浮力を体験できる泥の池が!アドベンチャーが大好きで泥だらけになりたい人には、暗黒の洞窟がおすすめです。
高さ最大約240m!地球上で唯一無二の存在と言っても過言ではない、世界を驚かせたダイナミックな「ソンドン洞窟」もご紹介しておきましょう。
ジャングルにあいた巨大な穴。その高層ビルが入るほど大きく深い穴の下に、ソンドン洞窟の入口があります。洞窟に入るためにはまず、はるか下までロープで降りなければなりません!
広大な洞窟の内部には地下河川や池があり、神秘的に差し込む太陽光、生い茂ったジャングル、鍾乳石など洞窟の魅力をぎゅっと全て詰め込んだような場所。桁違いの深さと広さを誇るソンドン洞窟は、基本的にはロッククライミングなど高度な技術を持つ探検家しか立ち入ることができない、想像をはるかに超えた洞窟なんです。
旅行者が参加できるソンドン洞窟探検ツアーもあるようですが、料金もスケールも一般人に到底叶うレベルではありません。映像で見るだけでも十分満足できると思うので、機会があればぜひ見てみてくださいね。
いかがでしたか?イギリス人洞窟探検家の飽くなき探究心により発見され、一般の観光客へも公開されることとなった壮大な洞窟が魅力の世界遺産、フォンニャ=ケバン国立公園。それぞれの洞窟が違った顔を持っているのでどこに行こうか悩みますね。手軽な観光ができる洞窟からアドベンチャー要素満載の洞窟探検まで、どの洞窟観光も一生の思い出が得られるはず。
今もなお探検が進行中、という話を聞いただけでもワクワク。将来、新たな洞窟やルートがどんどん公開されることにますます期待が高まります。